脳の血管が破れたり、詰まったりすることによって意識がなくなったり感覚に障害を起こす状態を脳卒中といいます。その中でも脳の血管が詰まるタイプの脳卒中が脳梗塞であり、脳卒中の多くはこのタイプになります。脳の血管がつまることで脳の組織に酸素を運ぶことができなくなり、やがて細胞が死に至り、意識や感覚に障害を引き起こします。
脳卒中とは
セルフチェック
以下のような症状が現れたら、それは脳梗塞の前兆かもしれません
運動障害、感覚障害
- 身体の片側から顔面に麻痺やしびれる感覚が起こる
言語障害、失語症
- ろれつが回らず何を言っているのか聞き取れない
- 話したいのに言葉が出ない
- 言葉が理解できない
視野障害
- 視野が半分だけ欠ける
平衡感覚の障害
- ふらつきやめまいがおこる
「日本国内では年間およそ30万人が脳卒中を発症しており、その大半が脳梗塞であるといわれています。また、一度脳梗塞を起こした患者さんは、年間3-5%の確率で再発を起こすといわれています。」
検査
脳梗塞の原因を調べるためには以下のような検査を行います。
原因を適切に診断することによって、それぞれの患者さんに合った再発予防治療を行うことができます。
頭部MRI・頭部CT
心電図
心エコー
血液検査
脳梗塞は血管が詰まった原因によって、主には3種類に分類されます。
アテローム血栓性脳梗塞
脳の太い血管で血管の壁が厚くなったり、そこに血のかたまり(=血栓)ができて血流が悪くなります。
加齢や高血圧、コレステロールが高いことや糖尿病、喫煙などが原因になるといわれています。
ラクナ梗塞
脳の細い血管で血管の壁が厚くなったり、そこに血栓ができて血流が悪くなります。
加齢や高血圧、糖尿病などが原因になるといわれています。
心原性脳塞栓症
主に心臓の拍動が不規則になることで心臓内に血栓ができ、それが血流と共に脳内の血管まで飛んでいき、脳の血流を障害します。
その他の脳梗塞
上記3つの分類に当てはまらない特殊な原因による脳梗塞もあります。
その中の1つが、PFO(卵円孔開存)による脳梗塞です。
PFO(卵円孔開存)が脳梗塞を起こすしくみは以下の通りです。
心臓の左右の心房の間の心房中隔に胎児期に開いている卵円孔は、右心房から左心房へ酸素を送り込む役割を果たします。通常であればPFOは生後自然に閉じます。ただし健康な方でも4人に1人は空いたままになっているといわれています。通常は症状もなく、治療の必要もないとされていますが、まれに卵円孔が閉じずに開存しているために右心房から左心房に血液が直接流れ込み、その血流にのった血栓(=血のかたまり)が卵円孔を通過し脳に達することで脳梗塞の原因になるといわれています。
出生後、卵円孔は自然に閉じることが多い
卵円孔が開いたままの場合、主に足の静脈の血栓が卵円孔を介して脳へ到達することがある
【参考】
Ay H, Furie KL, Singhal A, et al. An evidence-based causative classification system for acute ischemic stroke. Ann Neurol. 2005;58:688-97
Homma S, Sacco RL : Patent foramen ovale and stroke. Circulation 112 : 1063-1072, 2005